マスク生活と顎関節症に関係性はありますか?
名古屋市瑞穂区の歯医者「鈴木歯科クリニック」歯科医師の鈴木良典です。
厚生労働省(国)の指針により、マスクの着用義務が解除されました。我々も、少しずつコロナ前の生活に戻していかなければならない場面が増えてきております。コロナ生活が始まった頃より、少しずつ顎関節症を訴える患者さまが増えてきました。今回は、マスク生活と顎関節症との関係についてお話しします。
CBCテレビ夕方のニュース「チャント!」で取材を受けました。
このコラムの内容について、
名古屋市の噛み合わせ・顎関節症治療の専門の歯医者として、鈴木歯科クリニックがCBCテレビ夕方のニュース「チャント!」の取材を受けました!
令和5年4月12日水曜日、4月13日木曜日15:49〜19:00のどこかでの放送の予定です。顎関節症の病態や、マスクとの関係性についてお話しする予定です。宜しければご覧ください!
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マスクと顎関節症との関係性は
直接的な関係があるとは言えません。また、統計が出ていない以上関係性がゼロとも言えません。
近年の顎関節症患者さんが増えた理由として、頬杖等による圧力によるものの可能性も十分に考えられます。一人ひとり原因は異なることが多いため、原因を明らかにし、対策をとっていくのが良いでしょう。
マスクの着用の考え方について
厚生労働省HPより
<お知らせ>
これまで屋外では、マスク着用は原則不要、屋内では原則着用としていましたが
令和5年3月13日以降、マスクの着用は、個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました。
本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、ご配慮をお願いします。
マスクとコロナと顎関節症
マスクと顎関節症
結論からお話しすると、マスクと関連する顎関節症の具体例は、以下の通りです。
- 呼吸のしづらさによる口呼吸
- 口呼吸による舌を動かす筋肉(舌筋)の機能低下による低位舌
- 舌低位により下顎が不安定になり、くいしばりやすくなる
- 顎を圧迫するタイプのマスクで顎関節を押さえつけている可能性
- 顎関節を長時間動かさずに起きる滑液の交換不全
顎関節症やくいしばり、口呼吸について、さらに掘り下げていきましょう。
顎関節症の定義
1956年、上野らがはじめて用いた用語であり、1998年には日本顎関節学会により診断基準が示されている。筋性のものと間接性のものに大別され、大きく4つの病態に分類される。
米国口腔顔面痛学会(AAOP)によれば、TMD(temporomandibular disorders)は顎関節生涯、咀嚼筋障害および関連するすべての組織を含む筋骨格と神経筋の包括的病名であり、我が国の顎関節症と完全一致はしない。
顎関節症の原因
顎関節症の原因はさまざまで、よくある原因として
- 不正咬合(噛み合わせが悪い)
- 頬杖
- 姿勢が悪い
- 硬いものを食べている
- 顎を動かさない習慣(マスク等)
- 口呼吸によるくいしばり
- その他、原因は様々…
顎関節症の症状
顎関節症は、朝起きた時や食事時に耳の付け根周囲の痛かったり、お口を開け閉めするときの「カクカク音」、お口が開かないなどの症状がよくみられます。
顎関節症による開口障害
顎ズレ、食いしばり、歯軋り、頬杖などで関節円盤に偏位した力が加わると円盤が変形して、開閉時に雑音や痛みを伴うようになったり、関節の後部が圧迫されて関節円盤が前方に折れ曲がると滑走運動を妨げて通常4.5~5センチ開けれるのが2~3センチ迄しか開かない開口障害になることがあります。そういった状態に陥ると、食べるものにも制限がかかってきます。
ハンバーガーが食べられない!
開口障害が出た場合は、長期間放置すると治療成果が悪くなるため、早めの専門機関(歯科)の受診が有効と考えられます。
くいしばりについて
上下の歯が当たっている状態を「Tooth Contacting Habit(歯列接触癖)」といい、くいしばりの原因とも言われています。この状態が長時間続くと顎関節を痛めたり、頭痛や肩こりを増悪させる可能性があります。
頭蓋骨の写真をご覧ください。下の顎は、頭蓋骨(側頭骨)とはくっついておらず、宙に浮いています。また、集中したり、走ったり、階段を登ったりするときには下顎を安定させる必要があります。
下顎を安定させる方法は、①舌全体を上顎に押し当てて安定させる ②上の歯と下の歯をグッと噛みしめて安定させる方法の2つがあります。
①の舌で安定させている場合は正常ですが、②で安定させると顎関節症や筋肉の過収縮による偏頭痛や肩こりなども引き起こす場合があります。
食い縛りある人の見分け方
くいしばりがある方は、顎関節症を発生させたり、症状が悪化することがあります。
食いしばりがある方に多い特徴は、
- 静かにしているときにベロが下顎にある(上顎についていない)
- 骨隆起が有る
- 舌縁に歯形がある
- 唾を飲む時口角が動く
舌が下がっていて陰圧を掛けにくいので舌を前歯に押し当て口輪筋も寄せて唾を飲み込む為嚥下時に口角が動きます。
マスク生活が成長に及ぼす影響(口呼吸など)
マスクを長期間つけていると、息がしづらいため(酸素のサチュレーションが少し落ちる)口呼吸になりやすくなります。
また、舌が下に落ちることで結果的に不正咬合を引き起こしたり、知能の発育の遅れや認知の促進に影響を及ぼす可能性も考えられます。顎や表情筋の運動能力低下も考えられるでしょう。
顎や表情筋の運動能力低下で血流が悪くなることで顎や頭の成長発育が悪くなる可能性も考えられます。
表情を学ぶ乳幼児には認知発達が大切で、そのためにマスクを外した大人の表情が必要と思われます。
口呼吸と顎関節症
口呼吸で舌の筋力が低下して舌が口蓋から離れると下顎位が不安定になり、食い縛りや歯軋りが増えて顎関節症が起きやすくなります。
逆に、舌が口蓋に引っ付いてると食いしばれませんし、就寝時にも鼻呼吸でいびきや、無呼吸症候群、誤嚥を起こしにくくなります。
成長期の児童に於いて、歯は舌と頬の筋力のバランスの取れた位置に並ぶので、舌が下がって口蓋にくっ付いてないと歯列は狭窄して下顎は後退し顎関節症になりやすくなります。
時と場合を考えたマスク着用をおすすめします。
マスクと顎関節症
舌下位やくいしばり以外に、マスクが原因で起こりうる顎関節症があります。
①マスクのサイズが合ってない場合の直接的な顎関節の圧迫
頻度は非常に少ないと思いますが、きついマスクで顎関節を後上方に圧迫するようなものを使用されている場合、矯正装置「チンキャップ」と同じような効果が起こってしまう可能性があります。
②長時間顎を動かさないことで起きる顎関節の滑液の交換障害
我々人間の組織は、通常血液で満たされていることが多いのですが、顎関節周囲の組織は血液が通っておらず「滑液(潤滑剤のようなもの)」で満たされています。
血液で満たされている場合は、受傷した際は血液に入っている細胞の働きによって修復と治癒が行われるのですが、顎関節は血液がないため顎関節がダメージを受けると、修復が行われません。そのため、二次的変化として顎関節の機能を営むためのリモデリングを起こしていると考えられます。
それとは別に、顎を長時間動かさないでいると、滑液の交換が行われないため、その場合も顎関節軟骨に損傷を与えてしまいます。いったん損傷すると修復はきわめて困難と考えられています。滑液、滑膜組織、軟骨細胞は一つが損なわれると3つとも損なわれる可能性があります。
舌下位による発育阻害・悪影響
舌(ベロ・ぜつ)は通常、上顎に全体がひっついているのが正常な位置で、その上で、上下の顎をリラックスして「上下の歯を少し離す」のが安静状態です。
これらは舌下位(舌が下の歯についている状態)の方に多く見られ、舌下位は成長期のお子さんにおいては正常な発育を阻害してしまう原因となり得ます。
舌下位によって起こり得る成長阻害・悪影響
舌下位によって起こりうる発育阻害、アトピーなどアレルギー症状のフローチャートを以下に記します。
- 舌が下にある
- 上顎は舌で広げられて成長する側面があるため、上顎の発育不全が起こる
- 上顎が大きくならないので、歯が並びきらず歯並びが悪くなる(不正咬合)
- 不正咬合で口呼吸の可能性が出てくる
- 歯が並びきらずに、成長後に抜歯矯正することでマウスボリューム(口腔内の容量)の低下する
- マウスボリュームが減ることで舌が口の中に入りきらず咽頭に落ち込む
- 咽頭に舌があることで息がしづらくなり、口を開いて呼吸をする可能性
- 口呼吸は、アレルゲンを直接体内に入れるためアトピーやアレルギー症状を発生・増悪させる可能性
※抜歯を伴う矯正治療でアトピー・アレルギー症状が発生したり、逆にマウスボリュームを獲得する治療でそれらの症状が改善した報告があります。
舌下位は、舌筋の訓練をすることで改善が見られる場合があります。
専門機関(歯科)での舌訓練を受けましょう!
顎関節症の対策・治療
顎関節症を疑う方、特に顎が開かない症状が出ている方は早めの治療が必要ですので、顎関節症治療の専門機関(歯医者)の受診を最優先にしましょう。
そして顎関節症はお一人おひとり原因が異なる場合が多く、まずは検査と聞き取り調査で原因を突き止め、今後悪化させない、再発防止に取り組むことが最短で最善であると考えられるでしょう。
また、食いしばりや歯軋りがひどい方は、顎関節治療用のマウスピースが有効です。その際には、柔らかいゴムのようなマウスピースは長期使用に向かないため、基礎床のしっかりしたタイプのマウスピース(プレート)を作るのをお勧めします。
噛み合わせと負担のない顎運動を反映させたものが必要ですので、顎関節症の治療に慣れている歯科医院で作ってもらうようにしましょう。
予防のためのトレーニング
舌が下に落ち込んで、口呼吸とくいしばりが起きているものに関しては、舌の訓練を行い鼻呼吸を取り戻していきます。
その際には、
【なにぬべ体操】
が、有効です✨
なにぬべ体操
なにぬべ体操は、九州の今井先生が広められた「あいうべ体操」をベースにし、鈴木歯科クリニック鈴木勝博がアレンジを加えた変法で、大きくお口を開けないことで顎関節への負担をなくしたものになります。
顎関節に症状がない方はあいうべ体操でOKですが、「あ」の口で大きく開けることで顎関節への負担が大きくなって顎関節症が悪化してしまう可能性があるため、開口量に制限のある「な」の発音をしてもらうようにしています。
なにぬべ体操の特徴
①顎関節症の方には「あ」では無く、「な」で舌を口蓋前方に舌先を付けた「な」の方が滑走運転をしないから開口障害になりにくい
②「に」で舌を口蓋に押し付けて嚥下機能を高める
③「べ」で舌筋力を強化して舌骨を引き上げて甲状軟骨挙げ易くする事で喉頭蓋が閉じ易くなり、誤嚥がなりにくくなる
以上の効果が期待できます✨
詳しいやり方は、Yahoo!ニュースのトップニュースになった記事ページで紹介しております。
顎関節症対策治療の一覧
- 原因の特定
- 生活習慣の見直し
- 顎の位置の安定化(歯医者さんで)
- 歯並びの治療(歯科矯正・自費)
- 噛み合わせの治療(被せ物・自費)
- マウスピースでの対症療法(顎関節症のみ保険適応)
鈴木歯科クリニックでは、「顎関節症」を保険治療で行なっております。
ご予約は、便利な24時間WEB予約をご利用ください。(キャンセルは2日前までとなっておりますので、ご注意ください。)
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